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Channel: スポーツナビ+ タグ:東日本大震災
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Jリーグホームスタジアム訪問記~ベガルタ仙台~

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 スポーツが好きな人にとって、自分が生まれ育った土地にプロスポーツクラブがあることは誇りだ。しかし、全国を見渡せばプロスポーツクラブという存在が、自分の住む地域に存在しないことは決して珍しいことではない。そうした中、同じ地域に3つのプロスポーツクラブが存在する街が東北の地にある。野球、サッカー、バスケという現在の日本における三大プロリーグの全てが集う杜の都仙台。その3つのうちの1であるベガルタ仙台のホームスタジアムであるユアテックスタジアム宮城(以下ユアスタ)を訪れ、同じ街に3つの異なるスポーツクラブが存在する意味と現状。そして3つのプロスポーツクラブが今後、仙台であるべき姿を探ることにした。↑ユアスタは、仙台の中心街から近い上に最寄駅から徒歩5分ほどと抜群のアクセスを誇る ベガルタに加え、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルス、Bリーグの仙台89ersというそれぞれ異なる3つのプロスポーツクラブのホームタウンとなっている仙台。全国的に見ても、仙台のように同一タウンに3つの異なるプロスポーツクラブがあるのは、北海道、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、福岡と仙台を含め、8県しかない。そうした数少ない存在においても仙台のプロスポーツの充実度は特筆すべきものがある。ベガルタと89ersは共に1部、さらに3つのクラブ共に仙台市をメインに活動している。その上、それぞれのホームスタジアムまたはアリーナである、ユアスタ、コボパーク宮城、カメイ・アリーナは、いずれも仙台駅から20分ほどでアクセスが可能であり、スポーツを観る環境も整備されている。こうして、あらゆる面から仙台のプロスポーツの充実が伺うことができる。数だけでみれば、首都圏あるいは大阪といった地域の方が上かもしれないが、あらゆる質といった面においては、仙台におけるプロスポーツの充実度は、全国1、2を争うレベルと言って良いかもしれない。 「やっぱり地域の誇りでもあるし、1年中楽しめるのが良いよね」と、サポーターが話す。サッカーと野球のシーズンは、殆ど同時期に開幕する。春先にかけて始まり秋から冬にかけて閉幕する。一方バスケの場合は、秋に開幕し春から夏にかけて閉幕する。したがって仙台市民は1年中プロスポーツ観戦を楽しむことが可能なのだ。また、クラブが躍進を果たした時は、ファンやサポーター、関心の薄い人関係無しに地元では大変な盛り上がりを見せる。ベガルタであれば東日本大震災という大きな影響を受けながらも4位と躍進した2011年シーズン、楽天であれば日本一を達成した2013年シーズンにおいて、それぞれ仙台は大変な盛り上がりを見せたそうだ。こうして地元のクラブ、球団が躍進することは、地元の人を誇らしい気持ちにさせる。こうした3つのプロクラブを抱える仙台市ではあるが、市あるいは県の3つのクラブに対する支援や期待も大きいそうで、仙台市の公式サイトでは、それぞれのクラブ情報に加え、毎年、ベガルタと楽天がもたらした経済効果といったデータも公表しており、こうしたところからも仙台にとって3つのクラブが貴重な存在であるかが伺うことができる。 こうした3つのクラブ、球団があるとは言え、市内あるいは県内において圧倒的な人気を誇るのは、やはり楽天だそうだ。「やっぱり楽天の影響力は大きいよね」と、ベガルタサポーターが話す。やはり野球人気に加え、ベガルタ、89ersに比べ楽天の資金力には大きな差があり、1つ1つやることも規模が違う。別にこうした状況は、当然と言えば当然ではあるが、あるサポーターが発した、「確かに、私たちからしたら地元に3つのプロスポーツがあることは良いことだけど、スポンサーなどの観点からみたら、ベガルタはまだしも89ersはかなり苦労しているんじゃないかな」という言葉は、少しメリットが多い反面、クラブによって難しさもあるんだなとを感じたものだ。理想は多くの地元企業がそれぞれのクラブに出資してくれることであるが、必ずしもそれが実現する訳ではなく、どうしても影響力の大きい楽天に流れてしまうのは致し方ない話だ。そうした意味では、89ersやベガルタは難しい側面もあるのかもしれない。↑地下鉄の駅には、こうした大きな看板が目に飛び込んでくる 「ベガルタと89ersがコラボしたことはあったかもしれないが、これまで殆ど無かったね」とサポーターが話す。このサポーターだけでなく、この日に話を伺った全てのサポーターが同様の言葉を述べた。駅前などに3つのクラブそれぞれのエンブレムやマスコットがあしらわれたポスターなどが掲示されている光景を見ると、クラブ同士の繋がりも多くあるのだろうと思ったものだが、意外にも3つのスポーツクラブは、同じ地域にありながらも横の結びつきがあまりないというのが現状のようだ。もちろん、こうした状況にサポーターは満足しておらず、多くのサポーターは、それぞれのクラブが結び付きを強めて欲しいと望む。もし横の繋がりが充実すれば、「行ってみたいなと思ってはいるんですが、まだベガルタの試合しか来たことがないんですよね」と、話すベガルタサポーターがいたように、興味はあるものの、手を出せていない人にとっては、別のクラブの試合を観に行くきっかけにもなる可能性は十分にあると筆者は考える。また、「楽天は人気があるので、そうした力を借りることでベガルタにも人を呼び込めれば」といったようなに楽天の力を借りることで、ベガルタの観客増に期待するというサポーターも存在した。 同じ地域にJリーグとBリーグのクラブがある場合、それぞれのクラブが何かコラボを展開するケースは比較的多い。これは、BリーグがJリーグを参考にして作られたリーグともあって両者の方向性が一致するというのが無いよりも大きな要因であると筆者は考える。しかし、プロ野球とは構造や仕組み、方向性は大きく異なることも影響してか、仙台のみならず、プロ野球が他のプロスポーツとコラボしたというケースは、これまで決して多いとは言えない。そうした中、プロ野球全12球団において、楽天は地域密着という意識の強さは1、2位を争う球団と言える。以前の球団名の楽天ゴールデンイーグルスから、現球団名の東北楽天ゴールデンイーグルスへと球団名を改称したのは、東北という地域を強く意識した現れだ。そうした意味では、プロ野球の他球団に比べれば、JリーグやBリーグに近い方向性を持っていると言える。さらに、プロ野球には、Jリーグを大きく超える、試合以外におけるエンタメ性を提供しているなど、Jリーグあるいはクラブが持っていないノウハウを多く持っている。「スタジアムでのイベントなどが変わり映えしないのは何とかして欲しい」と嘆くサポーターがいたが、このサポーターの言葉通り、今のユアスタにエンタメ性があるとは言えない。もし、それぞれの交流が深くなれば、楽天が持つエンタメ性のノウハウといったものを共有することで、ユアスタをより良いスタジアムにすることも可能かもしれない。 サポーターの言葉が示すように、3つのクラブの結びつきは決して良い状況とは言えない。3者の思惑が一体どのようなものであるのかは分からないが、3者がお互いをライバルと意識してはならない。重要なのはお互いが協力し合いながら仙台を盛り上げるという意識を持つことだ。少なくともそうした意識を共有することができていれば、今のような状況は考えにくい。やはりどこかで、お互いをライバルとして認識するのがあるのではないか筆者は考える。それでは、せっかく同じ地域に異なる3つのプロスポーツクラブがあるというメリットを生かし切れていないのではないか。↑スポーツは人を1つにする力を持つ こうして3つのプロスポーツクラブが、より深い結びつきを持つことで、それぞれが持っていないものを相互で補完し合い、それぞれのクラブがメリットを受けるようになって欲しいとこれまで述べてきたが、3つのスポーツクラブが、もう1つ違う意味で、この仙台の地で1になる必要があるとサポーターを取材する過程で分かった。「東日本大震災の復興イベントのようなものを各クラブやっているけど、それを各クラブが1つになってやることで、もっと大きなものになると思うので、みんなが1つになることで震災を共有して欲しい」と、あるサポーターが話す。未曾有の大震災から6年が経過し、「記憶が薄れつつ」と、サポーターも話すなど、時間の経過と共に人々の記憶から薄れていってしまうのは事実であり、仕方のないことかもしれない。しかし、こうした深い悲しみを忘れない為、そしてスポーツによって出来ることはあるので、それぞれのクラブはこれまで復興イベントを行ってきた。しかし、それぞれが別々に行うのではなく、大掛かりに3つのクラブが合同で行い、3つのスポーツクラブが1つになることで、みんなで震災を共有して欲しいというのがサポーターの願いだ。思えば、2011年シーズンにおけるベガルタの躍進も、2013年シーズンにおける楽天の日本一も震災直後の人々に勇気を与え、多くの人の感動を呼んだ。スポーツの力は大きなものだと感じた人は多いはずだ。スポーツは、多くの人を1つにすることを可能にする力を持っている。そうした多くの人を1つにする象徴でもある、仙台にある3つのスポーツクラブが1つになり、震災の復興イベントを行うことは、果てしなく大きな意味を持つのではないか。 全国の中でも屈指のプロスポーツ充実度を誇る仙台。今、多くの仙台市民がこうした存在を誇りに思っているが、より一層3つのプロスポーツクラブが同じ地域にあるということを意味あるものにする為には、お互いにが深い繋がりを持つことによって、1人だけでは、することのできないものを可能にし、それを多くのサポーター、市民に提供することが求められる。そして、それだけでなく震災の被害を受けた街として、みんなで震災という過去を共有し、復興を果たしていくという側面でも1つになる重要性がある。仙台にプロスポーツクラブが3つあるという意味、そして価値を高める為に、より強固な繋がりを築いていって欲しいものだ。 2017年4月16日VS鹿島アントラーズにて取材・作成

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